*

【松本零士】「恐竜荘物語」で描かれた先の見えない明日

公開日: : 最終更新日:2016/05/19 漫画

松本零士の「恐竜荘物語」

松本零士といえば「銀河鉄道999」や「宇宙戦艦ヤマト」で有名ですが、自分はそれらの有名どころを一作も見たことがありません。
だから今回読んだ「恐竜荘物語」が自分にとって初の松本零士作品になるわけですが、さすがにこの作品が入口になるとは思っていませんでした。

「恐竜荘物語」は、「元祖大四畳半大物語」という作品に出てくる登場人物が主人公のスピンオフ的作品になっているらしいです。
もちろん元の作品を読んでいないので二作の繋がりがまったくわからなかったけど話として独立しているので誰でも読むことができると思います。

堕落したモラトリアム期

SF小説家をこころざすものの、その日の生活もままならない、ヤー公ジュリーの大四畳半人生奮闘物語。大したことがあるわけでなく、生活は特に面白いわけでもない。ここはそこらへんのどこかの誰かのいる、何の変哲もないアパート・恐竜荘。松本零士の原体験をモデルとした、四畳半一間の人間ドラマ。

大したことがあるわけでもなく、生活が面白いわけでもないと紹介されていますが、作中ではでかい事件が起こって面白そうなことが始まったりしています。
ただそれらを目の当たりにしてものらりくらりとやり過ごしてしまうのがジュリーという人間なのだと感じました。

色々起こってもエピソードはすべて1話完結、物語の可能性があってもそれを広げない、成り行き任せで最後は寝てしまうという、「物語を物語にできない凡人体質の男の話」というメタなネタに取れなくもありません。
かといってジュリーが空っぽな人間かと言えばそうでもなく、彼には小説家になりたいという夢があってそのために努力しなくてはという考えもあります。
それでも目先の酒や睡眠に飛びついてしまう辺りに妙なリアリティがあってのんびりしてるのに焦燥感がある不思議な作品でした。

なるようになるからといって
いつまでもこんな事をしていては
いけないのではあるまいかと
ジュリーは思ってみても
しょうがないから
寝られるときに寝るのだと考えて
よく寝る男はいつの日か
必ずなるようになるとも
思ってもみる
ここは恐竜荘
始めも終わりもない
ジュリーの部屋……
(第13話「月夜のタヌキの物語」より)

あとがきで明かされるこの作品の意図

単行本のあとがきでは松本零士本人の解説が載っていてそれが面白かったです。

作者自身が年々時間が過ぎるのを早く感じており、それに反比例して自由になりたいという願望が強くなっていると思ったこと。
しかし実際に自由にゴロゴロしたら先が見えない不安にかられてしまうという矛盾。
自分のやりたいようにやるモラトリアム期のような時間はいずれそれが永久に帰らないことを理解させられる「春の夜の夢」で、自由と一緒に感じるのは何とも言えない孤独感であるということ。
曖昧ながらもそれを感じていて先が見えない自分の生活をジュリーに代弁させていたのが「恐竜荘物語」だったのです。

暗い緑の中にポツンと落とされたジュリーと女性の顔。
最初は「なんでこんなにおどろおどろしい表紙なのか」と思っていましたが読み終えてみると不思議とこれでいいんだと思えました。

take

最後まで読んで頂きありがとうございます!このブログはアニメや漫画の感想・考察を目的としています。更新情報はTwitterでも発信しているので宜しかったらフォローお願いします。

スポンサーリンク

関連記事

【マンガ大賞2016】『BLUE GIANT』の紹介

マンガ大賞2016発表 【マンガ大賞2016第3位】 熱くて泣けるジャズ成長物語『BLUE

記事を読む

「ハイスコアガール」が連載再開! ようやく続きが読める!アニメ化は…!?

「ハイスコアガール」連載再開 色々あって連載が中断されていた押切蓮介先生の「ハイスコアガール」の再

記事を読む

超豪華なコラボ「水木しげるの遠野物語」

遠野物語とは 『遠野物語』は明治時代の民俗学者、柳田國男が遠野(岩手県)に伝わる民間伝承を

記事を読む

【聲の形】映画公開日は9月!キービジュアルと映像も発表!

「聲の形」映画化! 週刊少年マガジンで2014年まで連載されていた「聲の形」の映画が今年の

記事を読む

【刃牙道】感想 本部は皆を守護れるのか?

「刃牙道」のネタバレあります。 本部VSジャックハンマー 刃牙キャラの中でも屈指の強キャ

記事を読む

振り子の理論で考える「ハクメイとミコチ」第4巻

「ハクメイとミコチ」第4巻のネタバレあります。   第2回 次に来るマンガ大賞

記事を読む

【漫画感想】『ちはやふる』の魅力を考えてみた(ネタバレ注意)

『ちはやふる』滅茶苦茶面白いです。 原作を読んで思うのはアニメの出来もかなりよかったってこと。

記事を読む

「有名すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読む。」感想

水木しげるっぽい絵で描かれる純文学の世界 『有名すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読

記事を読む

「劇画・オバQ」が本当に切なかった話

藤子・F・不二雄先生の短編「劇画・オバQ」を読みました。 簡単なあらすじは以下に引用しておきま

記事を読む

【モブサイコ100】原作漫画を読みたい人はzipなど探す必要はない

【モブサイコ100】アニメ放送前に原作を読みたいならば… タイトルの通りです。 お金は払いたくな

記事を読む

スポンサーリンク

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

スポンサーリンク

【豊作!?】2017年秋アニメ視聴リストまとめとオススメ

久々の更新となりました。 前置きはさておき、さっそく今期(2017年

【フリップフラッパーズ】第1話、2話感想 楽しくてキラキラしたものを探す冒険

オリジナルアニメでガールミーツガールな感じが魅力的な「フリップフラッパ

【クロムクロ】第26話感想 この作品はこの1シーンを描く為に作られたのか…

夏アニメの消化と秋アニメのチェックに追われてしばらく更新が止まっていま

【モブサイコ100】12話「モブと霊幻」感想

「モブサイコ100」11話、12話見ました! (以下ネタバレ注意

【2016年秋アニメ】視聴リストとおすすめとか

夏アニメが終わって秋の視聴リストを考える時期になりました。 リストを

→もっと見る

  • 出身地:静岡県
    管理人のtakeと申します。
    趣味は釣りと音楽です。
    相互リンク・RSSは随時受付中!
PAGE TOP ↑